|
|
|
|
<オープニング>
秋晴れの青空に花火の音が響く。 いよいよ「銀幕市民運動会」の日がやってきた。自然公園の競技場には朝から、たくさんの市民の姿があった。ムービースター、ムービーファン、エキストラの区別なく、紅白2陣営に分かれてのさまざまな競技が行われる。 出場者の呼び出しを行うアナウンス、チープなのになぜか心浮き立たせるBGM、賑やかな出店の喧騒、そして応援の歓声――。 それはきっと世界中を探しても、今の銀幕市でしか実現しえない一日になるだろう。
そして。 気づいたものがいただろうか。 その日、とある事件が、運動会の片隅で起こっていたことに――。
★ ★ ★
運動会が白熱している中で、彼らは動いていた。こっそりと、人の目のつかぬ影で。 「はぁああああ」 それは、もう深い深いため息が顔だけは美形だが、その中身はただの女好きのホラーコメディ出身の吸血鬼が立っていた。 「この世ニ生を受ケテ、イツダッタワスレマシタガ……まったく、この世は理不尽ガ多いト思イマセンカ。我が友のブルマ大好き悪魔さん」 「運動会はブルマだろう。ブルマ」 見た目はしつこいようだが美形である長い黒髪を一つにまとめて肩にたらしているブルマ大好きでブルマ召喚しか才能のない悪魔は、運動会イコールブルマ見放題だと信じていた。 「私タチミタイナ、そんなウケルシカナイヨウナキャラには、何カト苦労も多いと」 「ブルマ、ああ、ブルマ」 「ソリャア、ミナサン、イロイロトある。人生イロイロ、やり方イロイロデスヨ、ケドネ」 「ブルマ、ブルマ」 「お前ら、話がかみ合ってないぞ」 ここに一人、またしても無駄に美形な男が一人。黒と白の混ざった短い髪に、黒色でまとめられた『殺し屋』である。 吸血鬼、悪魔同様にホラーコメディシリーズのキャラの一人である。 彼は至極真面目な顔をして二人の同じ出身の映画キャラたちを見た。 「お前ら語るなら、一つ一つ語らないか。それも愚痴とブルマって、馬鹿じゃないのか。お前ら本当に」 「ダッテ愚痴リタイお年頃なんでスモノ!」 「だってブルマを愛したいお年頃デス!」 どうして、こういうときだけほぼ同じタイミングで叫べるのか。人の話を聞いてないようで、ばっちりと聞いているから、厄介なやつらだ。 「だがな、俺も、ここで出てきたんだ。折角だ。あいつらに挨拶の一つもするかとおもってな。こんなことをしてみた」 「ワッツ?」 「決まっている。運動会っていたら、弁当があるだろう。それをいただくんだよ! 男は派手に生きろ。派手こそ我が命! みろ。参加者たちの弁当を奪ってきたぞ」 『殺し屋』が誇らしげにとってきた弁当を見せる。 「殺し屋ガ目立ッテ、ドウシマスカ。弁当ナクテモ買エバイイコトデスシ……ハッキリイッテ地味?」 吸血鬼のつっこみ。 「う、そ、そんな、そんな風に言わなくていいじゃないか。いじいじ、だって、俺、俺、殺し屋で、いっつも夜に相手のベッドに忍び込んで、殺そうとして、なんかよくわからないけども撃退されちゃうんだよ。いじいじ、俺だって目立ちたいよ。太陽きらきらのところで目立ちたいよ。ああん、ママン、ママン、ぼく、ぼくぅ〜〜」 「おー、よしよしデス。大の男がしゃがみこんで、いじけている姿は、どうかと思うデスよ」 「『殺し屋』、ソノ、コンプレックスの塊で、口でつっこまれると、すぐに幼児帰りする癖、ソロソロナオシタラ、ドウデスカ」 「だって、だって、ぼくぅ、人と話すこと、まったくないんだもん。いっつも寝ている人のところいってるもぅん」 「うー。だって。ぼくぅ、すごい? ずごい。すごい。飴をなめるもん。そしたらすぐに……復活! 俺は、俺は……今度こそ大々的に目立ってやるだ。ははははは」 腰に手をあてて高笑いする『殺し屋』を吸血鬼は冷めた目で見つめた。 「……アノ人、役柄が目立タナイ人ダカラ、ココニキテ、目立ツコトニ命モヤシテマセンカ?」 「それに、あいつ、忘れてないデスカ? ここぞというとき、必ず物が落ちる体質」 高笑いしている『殺し屋』の上に思いっきり盥が落ちた。さて、その盥がどこからか落ちたかは不明であるが、それでも『殺し屋』は拳を握り締めて叫ぶ。 「俺は、こんな『ここぞというときに何かが落ちてくる体質』なんかに負けずに、目立ってやるぞ!」 そういった彼の上に思いっきりバケツが落ちた。
種別名 | シナリオ |
管理番号 | 801 |
クリエイター | 槙皇旋律(wdpb9025) |
クリエイターコメント | 目立ちたいと本人は豪語してますが、天性の裏方で『ここぞというときにものが落ちてくる体質』の『殺し屋』が、みなさんが気持ちのいい汗をかいているときに、そのお弁当を狙っいまくっているようです。気配を殺すなんておちゃのこさいさいだそうです。 ホラーコメディ『殺し屋』は、武器ならば、なんでも扱えます。その服には常に様々な武器がありますが、ここぞというときにはどうしてか上から物が降ってきます。また、彼はすごくコンプレックスの塊で、口で言い負かされると子供返りしてしまうようです。自力で飴を嘗めて回復するようですが…… |
|
|
|
|
|